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ホワイト企業を目指すなら、まずは「ブラック顧客」を切りなさい こんな取り組みをしている企業もある(現代ビジネス)

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≪記事要旨≫

●「ブラック企業アナリスト」の新田龍氏のブラック企業がのうのうと生き永らえる構造的な要因についての解説記事。

●「顧客の問題」…「お客様は神様」のカン違い、下請け扱いして理不尽な要求をおこなう発注主の存在などが「ブラック顧客」となっている。

●「ブラック顧客」への問題解決のための処方箋はいろいろあるが、今回はこのような「ブラックな顧客を切る」という手段で業績や職場環境にポジティブな効果があった事例をいくつか紹介。

●組織がブラックになってしまうのは相応の背景と原因が複雑に絡み合っている。しかも、これまでの製造業中心の高度経済成長時代においては、そのシステムがちょうどよくフィットし、日本企業はシステムの恩恵を大きく受けていたという背景もある。長時間かけて形づくられたシステムであるだけに、これからの時代にフィットしたシステムに変わるには相応の時間とエネルギーが必要かもしれないとのこと。

 

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「ブラック企業ゼロ」の実現にあたっては大変な困難が立ちはだかっているという「ブラック企業アナリスト」の新田龍氏。前回の記事ではブラック企業がのうのうと生き永らえる構造的な要因を大きく4点に分け解説した。続く今回は、4点目の「顧客の問題」を中心に語る。

(4)顧客の問題

<ポイント>
・「お客様は神様」のカン違い
・下請け扱いして理不尽な要求をおこなう発注主の存在

「お客様は神様です」と発言したのは歌手の三波春夫氏であるが、その主旨は「自分の歌を聴きに来てくれるお客様に対して、神前で祈るように、雑念を払って、心をまっさらにして完璧な藝をお見せする」という意味である。

その言葉だけが一人歩きして「俺たちお客を神様扱いしろ」という意味で使われることは真意ではないと、三波氏のオフィシャルサイトでも説明されている。

日本ではおもてなし文化を誇る反面、「サービスには対価が発生する」ことが見過ごされがちだ。おもてなしの心で提供してもらえるサービスは有難く頂戴したいが、従業員の立場に配慮せず、相応の対価も払わず、要求ばかり激しい存在は「ブラック顧客」扱いされる。彼らは当然「神様」ではない。

立場が強い大企業には、自社の労働環境改善の取組と成果をもって「ホワイト化」と喧伝するところがある。それが純粋な自助努力であれば素晴らしいことだが、中には下請企業に仕事を丸投げするだけで、投げる側の自社こそ残業削減できるものの、シワ寄せを受けた下請側の労働環境は悪化するばかり…という事例もある。

金曜の夜になってから「週明け月曜朝までにやれ」とムチャな発注をしたり、締切ギリギリになってから仕様変更を要求したり、追加要求に対して然るべき追加料金を支払わなかったり、仕上がりが気に入らないと値引きを要求したり……。

そんなブラック顧客に対しては、対応する会社側も見積金額を上乗せしたり、納期を長めに設定したりするものだ。厳しい要求をするあまり、巡り巡って自分たちの首を絞めるようなことはやめたほうがよいだろう。

問題解決のための処方箋はいろいろあるが、今回はこのような「ブラックな顧客を切る」という手段で業績や職場環境にポジティブな効果があった事例をいくつかご紹介していこう。

成功事例1:株式会社アクシア

ITシステム開発を手掛ける同社は、2012年9月までは毎日終電、毎週休日出勤が当たり前のブラック企業だった。

しかし、同年10月から現在に至るまで残業ゼロを継続し、「ホワイト企業アワード」(財団法人日本次世代企業普及機構主催)の「労働時間削減部門」で大賞を受賞できるまで変わることができた。自社開発のシステムを用いて業務効率化を果たし、経営者が職場を巡回して残業ゼロを徹底させるといった地道な努力が実を結んだものである。

しかし従前は「明日朝までになんとかしろ」などと無理を言ってくる顧客にも対応していたところ、「残業対応はしない」と180度転換することになるので、事前に取引先には事情を説明し、協力を依頼していた。

ほぼ全ての取引先が好意的に共感・賛同してくれたが、中には「俺たちは休日でも働いてるんだから、お前たちも働いて当然だ!労働者名簿を提出して、名前がある社員は全員休日出勤しろ!」と意味不明な怒りをぶつけてきた顧客もいたという。

結果的にその会社とは契約解除となったが、それでもノー残業を実践した当月に売上は27%もアップするという成果となった。

同社代表の米村歩氏はこのように語っている。

「残業ゼロになって従業員の生産性は高まり、自主的に勉強するようになり、優秀な従業員も増えた。『残業やらないでお客さんから怒られることはないの?』と聞かれることもあるが、ほとんどの顧客は怒るどころか共感して褒めてくれる。稀に、定時後や休日の対応を強要してこようとする会社もあるが、そういう会社は社内の従業員に対しても同じようなことをやっているブラック企業なのだ」

成功事例2:有限会社中里スプリング製作所

コイルスプリングや板バネを製造販売する同社は、社員わずか20名の中小企業ながら、全国47都道府県に1,600社以上の取引先を持つ。大きな特徴は、企業としての判断基準を「好きか嫌いか」に置いていることだ。

同社には社長が独断で年に一度、頑張っている従業員を1~2名表彰する「ご褒美制度」というものがある。受賞者は「会社にある材料と設備を使って好きなものをつくれる権利」か、「嫌いな取引先を1社、切ることのできる権利」を与えられるのだ。

実際に、取引先を切った社員はこのように語る。

「『仕事を出してやっている』というような上から目線の態度で来られるとだんだん嫌になり、尊敬できない部分が出てくる」
「材料のグレードを下げてくれという話だったので、申し訳ないですが……、ということで断った」

取引先を切ってばかりでは仕事がなくなってしまうのではないか……、と心配してしまうが、そこは社長自身が「ご褒美」を与える度に営業活動を行い、「1社切る度に新たに取引先を10社増やす」という活動をしているのだ。

社長の中里良一氏はこう語る。

「人間は好きなものに対しては時間が短く感じるし、頑張ろうと思うもの。だからお客さんをまず好きになることが大事で、お客さんのためにもっといい商品を作ろうとすると、品物のレベルが間違いなく上がる」

成功事例3:ワタミ株式会社ほか飲食チェーン

全業界を平均した「新卒就職後3年以内の離職率」は、31.9%。しかし「宿泊・飲食サービス業」はその中でも最も高く、50.5%という不本意な数字を記録している(2016年・厚生労働省調べ)。

このような状況から、ブラックの代表例として挙げられることも多い業界ではあるが、中には独自の工夫によって良好な労働環境を維持している会社も存在する。具体的には、ワタミ株式会社(和民)、テンアライド株式会社(天狗)、ダイタンフード株式会社(富士そば)、株式会社はなまる(はなまるうどん)の各社だ。

上掲企業はいずれも働き方や制度を工夫し、業界でも先進的な取組をしているところだが、中でも上記の企業は「深夜時間帯の営業を止める」、「24時間営業をなくす」、「大晦日を定休日にする」など、あえて書き入れ時でもある「深夜/特定時間帯の客を切る」という選択をし、従業員にとって働きやすい環境を提供することで、結果的に離職率等が低下しているところが共通している。

テンアライドは業界トップクラスの低離職率と勤続年数の長さを誇っており、はなまるの離職率は10%を切る水準。またダイタンフードの正社員離職率は毎月平均2%弱。アルバイトの離職率も毎月平均6%以下だ。

ワタミに至っては、まだ厳しいブラック企業批判に晒されていた頃から改革に着手しており、2014年度から103店舗で営業時間見直しを実施、現在は131店舗に広がっている。また年中無休だった営業日についても、休業日を設けた店舗が現在128店となっており、人員配置に合わせて毎月見直しをおこなっているのだ。

結果として、すでに2014年度中には、新卒社員の1年後離職率を従前の22.1%から9.6%へと減少させていて、社員の約半数は月平均残業時間が45時間以内におさまっていた。そして2017年10月時点では、その割合は約9割まで高まっている。

一時は債務超過状態に陥った業績についても、既存店売上高前年比93.8%(2015年度)⇒103.8%(2016年度)と向上し、ES(従業員満足)も上向きになるという効果が生まれている。

今は「生みの苦しみ」の時期

このように、組織がブラックになってしまうのは相応の背景と原因が複雑に絡み合っている。

しかも、これまでの製造業中心の高度経済成長時代においては、そのシステムがちょうどよくフィットし、日本企業はシステムの恩恵を大きく受けていたという背景もある。長時間かけて形づくられたシステムであるだけに、これからの時代にフィットしたシステムに変わるには相応の時間とエネルギーが必要かもしれない。

現在の働き方改革にまつわる動きは、これまでのイデオロギーを覆す第一段階としての生みの苦しみの時期なのだろう。違法状態を厭わず、アンフェアな競争で利益を得るブラック企業が生き永らえることがないよう、我々も政策を注視していきたい。

誕生日を祝う、旅行を楽しむ、運動会や学芸会を観る……、家族とともに過ごせる時間など、一生にわずかしかない大変貴重なものだ。そんな当たり前のことが長時間労働の犠牲になるなど本末転倒でしかない。

「人として当たり前のことが、当たり前にできる国」にしていこうではないか。皆で改革を進め、全員で「自分たちの世代で日本は変わったんだ!」と自慢しようではないか。

(現代ビジネス)

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